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令和6年12月24日
関東信越厚生局
再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく改善命令について
関東信越厚生局長は、本日、下記のとおり、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号。以下「法」という。)に基づき、再生医療等提供機関及び細胞培養加工施設に対し、法第23条第1項及び第48条第2項に基づく改善命令を行いましたので、お知らせします。
記
第1 被処分者等
氏 名 橋口 華子
(医療法人 輝鳳会 THE K CLINIC管理者)
所 在 地 東京都中央区日本橋二丁目10番12号 プレリー日本橋ビル10階
計 画 名 悪性腫瘍の予防に対する自家NK細胞療法
処分内容 再生医療等の安全性の確保等に関する法律第23条第1項による改善命令
氏 名 甲 陽平
(医療法人 輝鳳会 池袋クリニック管理者)
所 在 地 東京都豊島区南池袋1丁目25-11 第15野萩ビル7階
計 画 名 悪性腫瘍の予防に対する自家培養NK細胞療法
処分内容 再生医療等の安全性の確保等に関する法律第23条第1項による改善命令
名 称 医療法人 輝鳳会
(理事長:久藤 しおり)
所 在 地 東京都豊島区南池袋1丁目25-11 第15野萩ビル7階
施 設 名 医療法人輝鳳会 池袋クリニック 培養センター
処分内容 再生医療等の安全性の確保等に関する法律第48条第2項による改善命令
第2 経緯
令和6年10月24日、「医療法人 輝鳳会 THE K CLINIC」(以下「医療機関A」という。)から、厚生労働省に対し、医療機関Aにおける再生医療等の提供(以下「本医療」という。)によるものと疑われる敗血症(菌名:Pseudoxanthomonas mexicana)のため、集中治療を要する入院症例が2名発生したとされる疾病等(以下「本疾病等」という。)が報告された。また、細胞培養加工施設である「医療法人 輝鳳会 池袋クリニック培養センター」(以下「本CPC」という。)から、本医療において投与された特定細胞加工物の参考物の検査において、当該感染症の原因と考えられる微生物が陽性となったとされる重大事態が報告された。
同月25日、これらの報告を受け、厚生労働省は、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると判断し、法第22条及び第47条に基づき、医療機関A及び本CPCに対し、当該報告に係る再生医療等の提供及び特定細胞加工物の製造の一時停止を命ずる緊急命令を発令した。
同月29日及び30日、医療機関A及び本CPCに対して、法第24条第1項、第52条第2項及び第53条第1項に基づく立入検査(以下「本検査」という。)を実施した。本検査の結果、本医療に用いられた細胞加工物は、「医療法人 輝鳳会 池袋クリニック」(以下「医療機関B」という。)の管理の下で本CPCにおいて培養され、医療機関Bに納入された後に、さらに医療機関Aに輸送され、患者に投与されていたことが判明した。
第3 処分の理由
本検査の結果、医療機関A、本CPC及び医療機関Bについて、以下に示す複数の法令違反が確認された。また、本疾病等は、本CPCで製造された特定細胞加工物による再生医療等によって生じたものである可能性が極めて高いと考えられた。
〇医療機関Aにおいて確認された法令違反
・医療機関Aにおいて提出された再生医療等提供計画(計画名:悪性腫瘍の予防に対する自家NK細胞療法。以下「計画A」という。)の不遵守(法第3条第3項及び再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則(平成26年厚生労働省令第110号。以下「則」という。)第10条第4項違反)
・計画Aに基づく患者への説明と患者からの同意取得の不実施(法第14条第1項及び則第13条違反)
・計画Aに基づく記録の作成・保存の不実施(法第16条第1項及び第2項違反)
・疾病等報告の厚生労働大臣への提出期限の不順守(法第18条及び則第36条違反)
〇医療機関Bにおいて確認された法令違反
・医療機関Bにおいて提出された再生医療等提供計画(計画名:悪性腫瘍の予防に対する自家培養NK細胞療法。以下「計画B」という。)の不遵守(法第3条第3項及び則第10条第4項違反)
・本CPCに対する特定細胞加工物概要書の規定と異なる製造方法による特定細胞加工物の製造指示(法第3条第3項及び則第10条第2項違反)
〇本CPCにおいて確認された法令違反
・試験検査室の構造設備に関する変更届の提出の不実施(法第40条第3項違反)
・特定細胞加工物等及び資材の微生物等による汚染等を防止するために必要な措置及び適切な工程管理の不実施(法第44条並びに則第99条第1項第11号及び第12号違反)
・製造部門及び品質部門における定期的な点検整備及びその記録の作成・保管の不実施(法第44条並びに則第99条第1項第7号及び第100条第1項第3号違反)
・品質部門における製造管理に係る確認の結果のロット毎の確認の不実施(法第44条並びに則第100条第1項第2号及び第3項違反)
・製造手順等からの逸脱発生時における適正な逸脱処理の不実施、許容範囲を超える微生物検出後の逸脱処理及び他の特定細胞加工物等の品質への影響・汚染原因の調査等の必要な措置の不実施(法第44条並びに則第105条第1項第1号並びに第2号イ、ロ及びハ違反)
・本疾病等の発生把握後の原因究明結果及び改善措置等の記録の作成、保管、確認、報告の不実施(法第44条並びに則第106条第1項第2号及び第3号並びに第2項違反)
・職員への教育訓練の実施記録の作成・保管の不実施(法第44条及び則第109条第5号違反)
・特定細胞加工物標準書における記載事項の改訂の不実施(法第44条及び則第110条第1号違反)
第4 改善命令の概要
今般の改善命令は、本検査等の結果、第3記載のとおり複数の法令違反により保健衛生上の危害が発生しうる状況が確認されたことから、再生医療等の提供体制の改善を命じるものである。
1 医療機関Aに対する改善命令の概要
一 則第20条の規定に基づき、医療機関Aにおいて行われる再生医療等が計画Aに従い適正に行われていることを随時確認するとともに、必要に応じて、かかる再生医療等の提供の中止又は計画Aの変更その他の再生医療等の適正な実施を確保するために必要な措置を講じること。また、医療機関Aにおける再生医療等を行う医師が再生医療等を行う際に、法第3条第3項及び則第10条第4項の規定に基づき、計画Aに基づいて再生医療等を行うことを確保するために必要な措置を講じること。
二 現在、法第47条に基づく緊急命令により製造を停止している本CPCに対して特定細胞加工物の製造を委託する場合には、本CPCにおいて、本CPCが発令を受けた改善命令に則って業務の改善が完了したことを確認すること。
三 計画Aに基づき他の細胞培養加工施設において特定細胞加工物の製造を委託する場合にも、細胞培養工程の安全性について改めて確認し、必要に応じて製造工程等を見直すこと。
四 特定細胞加工物の輸送に係る特定培養加工物概要書及び特定培養加工物標準書の記載が異なっており、整合性を改めて確認し、安全性を含めた再検討を行い必要に応じ修正すること。なお、令和4年3月31日医政研発0331第1号『「「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令」及び「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」の取扱いについて」及び「臨床研究法施行規則の施行等について」の一部改正について』において、則第99条第1項第24号に定める特定細胞加工物の品質の確保のために必要な措置として、運搬容器、運搬手順(温度管理、輸送時間管理等を含む。)等の輸送の条件が遵守され、特定細胞加工物標準書に規定された条件が維持されていることを確認することが挙げられるとされていることから、これらの規定が着実に実施されるよう再検討を行うこと。
五 上記一から四を踏まえ、上記の違反及び本疾病等が発生したことに関して適切な原因究明を行うとともに、当該原因究明の結果を前提とした是正措置及び再発防止策に係る改善計画を策定して、関東信越厚生局に提出すること。
2 医療機関Bに対する改善命令の概要
一 則第20条の規定に基づき、医療機関Bにおいて行われる再生医療等が計画Bに従い、適正に行われていることを随時確認するとともに、必要に応じて、かかる再生医療等の提供の中止又は計画Bの変更その他の再生医療等の適正な実施を確保するために必要な措置を講じること。また、医療機関Bにおける再生医療等を行う医師が再生医療等を行う際に、法第3条第3項及びこれに基づく則第10条第4項の規定に基づき、計画Bに基づいて再生医療等を行うことを確保するために必要な措置を講じること。
二 現在、法第47条に基づく緊急命令により製造を停止している本CPCに対して特定細胞加工物の製造を委託する場合には、本CPCにおいて、本CPCが発令を受けた改善命令に則って業務の改善が完了したことを確認すること。
三 計画Bに基づき他の細胞培養加工施設において特定細胞加工物の製造を委託する場合にも、細胞培養工程の安全性について改めて確認し、必要に応じて製造工程等を見直すこと。
四 上記一から三を踏まえ、上記の違反及び本疾病等が発生したことに関して適切な原因究明を行うとともに、当該原因究明の結果を前提とした是正措置及び再発防止策に係る改善計画を策定して、関東信越厚生局に提出すること。
3 本CPCに対する改善命令の概要
一 本CPCにおいて特定細胞加工物の製造を行う医療法人輝鳳会は、本CPCにおける微生物の汚染防止及び特定細胞加工物の安全性の確保の観点から、以下を実施すること。
・特定細胞加工物の製造工程及び輸送において、本疾病等に係る微生物の汚染及びその増殖が生じた原因について、厚生労働省の指示に基づき、改めて徹底した原因究明を行い、その結果を関東信越厚生局に報告すること。
・厚生労働省と協議を行いつつ、本CPCの清浄化及び所定の確認試験を実施し安全性を確認するとともに、その結果を関東信越厚生局に報告すること。
・則第99条に規定する製造管理及び基本的な作業中の手指衛生の管理等の感染予防・管理に関連する事項の改善を行うこと。特に微生物による細胞の汚染防止、製造に用いる水の取扱い、異なる細胞提供者から採取した細胞を取り扱う場合における交差汚染の防止については入念に検討を行うこと。
・製造工程において、最終産物の作成1日前に実施される中間体の無菌試験については、汚染の検出が困難と考えられる目視と1日のみの培養による試験ではなく、迅速無菌法等のより検出力の高い確認方法への変更を検討し、適切な措置を講じること。
・本CPCから再生医療等提供機関への特定細胞加工物の輸送方法については、令和4年3月31日医政研発0331第1号『「「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行令」及び「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則」の取扱いについて」及び「臨床研究法施行規則の施行等について」の一部改正について』(以下「施行通知」という。)において、則第99条第1項第24号に定める特定細胞加工物の品質の確保のために必要な措置として、運搬容器、運搬手順(温度管理、輸送時間管理等を含む。)等の輸送の条件が遵守され、特定細胞加工物標準書に規定された条件が維持されていることを確認することが挙げられるとされている。これらに基づき、運搬手順について再検討を行い、必要に応じて適切な措置を講じること。
・本CPCの作業所の構造設備について、試験検査室においては、製造に使用する原料及び資材の保管場所であり、清浄度管理区域及び無菌操作等区域への物品及び作業者の通り道でもあることから、適切な清掃、消毒、整理整頓や入室時の交靴等、清潔に保たれるよう必要に応じて適切な措置を講じること。
二 法令に基づく各文書の内容及び整合性を改めて確認し、安全性を含めた再検討を行い、必要に応じて修正すること。特に以下の事項については、改善すること。
・特定培養加工物標準書の標準的なフローのみに記載のある「凍結指示」について、同文書の本文中に具体的記載がみられないこと。
・特定細胞加工物の輸送に関する規定に係る特定培養加工物概要書及び特定培養加工物標準書の記載が異なっており、特に後者の記載は施行通知との整合性がとれないこと。
三 法令の遵守について改めて再点検を行うとともに、特に以下の事項について対応すること。
・法第40条第3項に規定する特定細胞加工物の製造の届出について、構造設備及びその他厚生労働省令で定める事項の変更事項を速やかに届け出ること。
・則第99条及び第100条に規定される製造管理・品質管理について、製造部門及び品質部門において、則第99条第1項第7号並びに第100条第1項第2号及び第3号の規定に基づき、構造設備に関する記録及び特定細胞加工物に関する記録等の状況の実情を見直すとともに、温度管理を要する設備等について定期的な点検整備及びその記録の作成・確認・保管を行うこと。また、則第100条第3項の規定に基づき、品質部門は、製造部門から報告された製造管理に係る確認の結果を製造番号ごとに確認すること。
・則第105条に規定される逸脱の管理について改めて確認し、遵守する体制を確保すること。
・則第106条に規定される品質等に関する情報及び品質不良等の処理について、則第106条第1項第2号及び第3号並びに第2項の規定に基づき、当該品質情報の内容、原因究明の結果及び改善措置を記載した記録を作成し、保管するとともに、品質部門に対して文書により速やかに報告すること。また、前号の報告について、品質部門の確認を受けること。
・則第109条に規定される教育訓練について、本CPCにおいて実施されている教育訓練の実施状況を、その根拠資料と共に説明すること。また、教育訓練の実施の記録を作成し、それを保管するための管理体制について改善計画を策定し、報告すること。
・則第110条に規定される文書の作成及び記録の管理について、適切な改訂を行うこと。
四 上記一から三を踏まえ、是正措置及び再発防止策に係る改善計画を策定して、関東信越厚生局に提出すること。